no.10 2008.12.16

諸外国の食品法規の改正に見られるびっくりニュース

私ども輸入食品に携わる者には、日常業務を面倒にしている原因の一つに「諸外国と我が国の法規の違い」が挙げられると思いますが、筆者が入手した「新しく注意が必要となるであろう情報」についてお知らせしたいと思います。

1. リステリア菌による食中毒は、欧米では無視できない件数(FDAの資料では毎年2,500件発生し、500名の死者)であり、一般的な温度管理では効果が低く(リステリアは低温で増殖し、通性嫌気性で、アルカリに強い)やっかいな細菌ですが、なんとFDAは、2006年「リステリア菌にのみ有効なバクテリオファージ」を食品添加物として承認し、食中毒防止に役立てることとしたようです。もちろん、使用条件に色々と制約はあるようですが、SF小説のような現実を目の当たりにして、いささかびっくりしました。筆者のように微生物学に疎い者から見ると、ファージのような「DNAだけの生物?」を自然界に放出して環境汚染にならないのかが心配ですが、それよりも、輸入食品衛生管理者の皆さんとしては、米国産の食肉製品や乳製品については、「添加物としてファージを使用していない事」を確認しなければならない仕事が増えたわけですから、やっかいな事です。

2. 米国同様にリステリアやサルモネラによる食中毒の多発を問題視しているEUでは、2008年家禽(鶏、七面鳥、アヒル、うずら)のと体(生体への投与ではなくカット前のと体)に4種類の抗菌剤を使用することを許可したようです。もちろん、と体への残留防止策や、表示義務、工場排水への処理規定等があるようですが、我が国での法規(残留動物用医薬品の扱いか、添加物の扱いか)との整合性如何により、輸入禁止扱いになる可能性が高く、詳細な調査が必要となります。

3. ポテトチップ等で問題視されているアクリルアミドについて
生成量の低減対策のひとつとして、加熱温度の低下/時間の短縮化が主力になりつつありますが、加熱不足でしょうか、いまいち美味しくなくなったような気がします。
これに対して、デンマークに本社のある酵素の有名メーカーが「アクリルアミドの素であるアスパラギン酸を選択的に分解」する酵素を発売したようで、製造工程を変更することなく、非常に有効とのことです。ただし、遺伝子組換え細菌から生産した酵素であり、我が国では未審査ですので輸入できません。すでに使用された製品もあるようですので、ポテト等の農産物を原料として焙焼・焙煎した製品については、当該酵素を使用していないことの点検が必要になってくるものと思われます。

4. ADHD(幼児注意欠陥・多動性障害)と食品添加物との関連性を精査していたFSA(英国食品基準庁)は、2009年末までに6種類の着色料を含む製品に「子供の活動や注意力に有害影響を及ぼす可能性がある」との表示を義務化すると発表。これらの着色料を自主的に禁止するよう働きかけるとされています。
これにより、英国内(実質的にEU内)への製品に以下の着色料の使用ができなくなります。
問題とされる色素は以下の通り。
  ・E102 タートラジン(日本名:黄色4号)    
  ・E110 サンセットイエロー(日本名:黄色5号) 
  ・E124 ポンソー4R(日本名:赤色102号)  
  ・E129 アルラレッド(日本名:赤色40号)
  ・E104 キノリンイエロー
  ・E122 カルモイシン

人間の皮膚細胞から「どんな臓器にでも応用できる万能細胞」の作成に成功したとか、ジフテリア菌の毒素の一部が持つ「たん白質合成阻害機能」を利用して卵巣ガン治療の新薬の安全性確認臨床テストが始まったとかのニュースは、未来への明るい情報であり、歓迎しますが、あるなしの問題ではなく、いつから・・・の問題だと言われている「ヒトーヒト感染型の新型インフルエンザ」の流行が始まった場合、その地域からの食品輸入はどうなるのか、公的な指導も、個々の企業での対策や方針等の情報が皆無なのがとても心配です。皆さんの企業での危機管理対策は検討されていますでしょうか。
海外出張の多い皆さんは、厚生労働省ホームページの新型インフルエンザ対策関連情報を参照して、発生地域や防除方法等の最新の情報を把握し、罹患しないようにすることはもちろんですが、新型インフルエンザを国内に持ち込まれることのないよう、切にお願いします。




(C) 2009 Association for the Safety of Imported Food, Japan