no.22
2011.5.12

レシチン等、添加物の由来原料の再調査のお勧め

 平成23年3月の輸入違反事例に大変重要な情報がありましたので紹介します。
これは「ドイツ製の菓子にヒマワリレシチンが使用されていた為、添加物の使用基準違反」とされた事例ですが、通常はあまり気にしていない「添加物そのものについての規格基準」の確認不足が原因ですので、あらためて関係法規を再確認しましょう。

まず、我が国の食品衛生法における食品添加物に関する各種の規制ですが、以下の内容だけは最低限知っていなければなりません。

1・ 日本国内で営業用に使用する食品に使用可能な食品添加物は、以下のいずれかのものだけである。(香料起源物質を除く)
食品衛生法施行規則別表第一に記載されているもの(いわゆる指定添加物
平成8年4月16日 厚生省告示第120号に規定する既存添加物名簿に記載されているもの
平成8年5月23日 衛化第56号 厚生省生活衛生局長通知「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」の別添3に掲載されているもの(いわゆる一般飲食物添加物

2・ 一部の食品添加物には「使用基準(使用できる食品、使用又は残留の量的基準、使用の制限等)」が定められており、これに合致しない使用は認められない。(厚生省告示第370号)

3・ 規格基準(定義、性状、由来原料等)と保存基準、製造基準等が定められている一部の食品添加物は、当該規格に合致するもののみが添加物として使用できる。(厚生省告示第370号)

さて、上記の3の規制について、もう少し噛み砕いて見ましょう。
通常「レシチン」と呼ばれ、色々な食品に使用されている乳化剤は、成分規格が定められているにもかかわらず(下記)、添加物としてのリスト(指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物)には入っていません。それでは、どうして使用出来るのかと言うと、食品衛生法上は、以下の5種が既存添加物として認められており、別名、簡略名又は類別名としてレシチンと認められていますので、規格基準に合致するものであって、かつ、以下の5種に該当するものであれば使用する事が出来ると言うことです

【レシチンの規格基準】
定義:レシチンは、油糧種子又は動物原料から得られたもので、その主成分はリン脂質である。
 (他に性状、確認試験、純度試験、乾燥減量の基準あり。)

【既存添加物としてリスト化されているレシチン】
卵黄レシチン(卵黄から得られたもの)
植物レシチン(アブラナ又は大豆の種子から得られたもの)
酵素処理レシチン(植物レシチン又は卵黄レシチンから得られたホスファチジルグリセロールを主成分とするもの)
酵素分解レシチン(植物レシチン又は卵黄レシチンから得られたホスファチジン酸及びリゾレシチンを主成分とするもの)
分別レシチン(植物レシチン又は卵黄レシチンから得られたスフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリンを主成分とするもの)

つまり、注意すべきは、いずれも「卵黄、アブラナ(ナタネの事)、大豆」を原料としたものに限られ、ヒマワリから得られたレシチンは認められないと言うことです。

亜麻シードガムやアロエベラ抽出物の様に「由来原料が名称になっているもの」であれば間違いはないでしょうが、ペクチン、カラギナン、植物タンニンの様に規格基準等で「由来原材料が明確にされているもの」については充分な注意が必要ですので、詳細な調査を行いましょう。

添加物の規格基準は「昭和34年12月28日厚生省告示第370号」を参照。
既存添加物名簿は「平成8年4月16日厚生省告示第120号」又は平成8年5月25日衛化第56号通知の別添1「既存添加物名簿収載品目リスト」を参照。




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