2013.9.3
no.33

海外出張者の方 にご注意

 年末用商品の手配や選定のための出張の機会が多くなる季節となりました。酷暑に耐えながらの通勤で体力の落ちたこの頃でしょうから、出張先での身体的トラブルは絶対に避けたいものです。
 さて、諸外国での食品関連のニュースや緊急通告データ等の中に、異様な情報が繰り返し発生している事に気づきましたのでお知らせしたいと思います。
     
A型肝炎ウイルスの食品からの検出
     HPSC(アイルランド保健サーベイランスセンター)報告  
     デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンにおいて、2012年10月から2013年8月にかけて、106名のA型肝炎確定患者が発生。イタリアやドイツからの同様な報告があり、同一の原因の可能性が高いとしながら、北アフリカ地域からの冷凍イチゴ、冷凍ベリーが原因食である可能性が高いと発表される。  
   2 CDC(米国疾病予防管理センター)報告  
     アメリカ西部を主とした10州において、2013年5月~8月、160名のA型肝炎確定患者が発生。家庭内での二次感染も確認されており、さらなる拡大を懸念しているとのこと。
トルコ産の冷凍ベリー、冷凍ザクロが原因食である可能性が高いとして輸入を一時停止する措置を講じている。
 
   3 ECDC(欧州疾病予防管理センター)報告  
     2013年1月から8月、欧州各国(ドイツ、ポーランド、アイルランド、オランダ)においてイタリアからの帰国者約90名にA型肝炎の患者が発生しているとの報告があった。
RASFF Portal(緊急警報通知)でもイタリア産の冷凍ベリーミックスからA型肝炎ウイルスが検出されたとの通報もあり原因食を追求している。
※イタリア産冷凍ベリーの果実原産国はセルビア、ブルガリア、ウクライナ、ポーランド、ルーマニア、ドイツ、カナダである。
 
   
A型肝炎 (Hepatitis A)
ウイルス性の肝炎。口から侵入したウイルスは消化管から血流に乗り肝臓に定着し、2~6週間の潜伏期間の後抗体が作られるようになると肝細胞が攻撃され多くは一過性の急性型で回復する。
不顕性感染も多いが、黄疸、白痢、発熱、倦怠感
無症状保菌者が水や食品を汚染することによる事故例が多い。
 
 
サイクロスポラによる食中毒患者多発
     FDA発表 2013年7~8月 米国中西部から東部の多数の州においてサイクロスポラによる食中毒症状を呈する患者が約600名発生している。
 原因食はメキシコ産のサラダミックス及び緑食野菜と見られ、当該食品は供給停止を行っているが、サルモネラ菌との複合中毒も複数見られるため果実(メロンやスイカ)を含めて十分な洗浄を行うよう奨励している。
 
   
サイクロスポラ (Cyclospora cayetanensis)
寄生性の原虫。 口から侵入したオーシスト(嚢胞体)は小腸で感染型オーシストに発育し2日から11日の潜伏期間の後発症。激烈な下痢が1ケ月以上続く他は他の症状は軽い。
ネズミやヒツジ、牛等の哺乳動物の糞便による水源汚染での事故例が多い。
 
       
   さて、A型肝炎とサイクロスポラの2つの問題を掲げましたが、その共通項は・・・水です。
 上下水道が整備されている国での発生はあまり見られない事案である筈のこれらの問題が、今年はなぜこんなに発生しているのだろうかと考えると、やはり渇水と洪水に関係がありそうです。
 
    渇水になると→ 汚れが濃縮された水が使用される、節水すると洗浄不足をまねく等  
   ・ 洪水になると→ 汚物や汚水が飲料原水に混入する、水たまりに病害生物が発生する等  
   この夏は我が国ばかりでなく「渇水と洪水」の両極端のニュースが連日報道されています。国外出張におでかけの際は、出来るだけ生水を飲まない事、野菜は火を通したものにする(一週間くらい生野菜をとらなくても・・・)等の注意をはらい、感染防止に留意しましょう。
 なお、帰国数週間後に、黄疸(白眼が黄色くなる)や下痢が続く等の症状があれば、必ず医師に相談しましょう。
 
     
    RASFF(EUの緊急警報ポータルサイト)情報にはA型肝炎ウイルスの検出による輸入禁止等の情報が掲示されていますので、食品の検査が可能のようですが、我が国ではまだ「公定法」が未設定ですので、食品のA型肝炎ウイルス検査は受託できないとの事です。
ただし、検疫所他では検討が開始されているとの情報もありますので、近い将来には検査可能と思われます。登録検査機関等の動向に注意しましょう。
 
     
     
     



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