2013.10.22
no.34

輸入食品の監視指導結果の概要について

 平成24年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果が公表されています。
 当該監視指導結果は「我々輸入事業者が実施した安全性管理の結果」として自覚し、今後の違反防止のための資料とするために公表されている訳であり、深く分析しなければならないのですが、食品の種類や検査の項目が多岐にわたるために、傾向など、多くの記述が読みにくいのもまた事実です。
 特に気付いた点を以下に挙げさせていただきますので参考にして下さい。

     
     数値的な傾向について  
     輸入届出件数は2,181,495件であり、昨年比4ポイント増、輸入重量は32,156千トンの4ポイント減となり、ますます輸入ロットの小口化が進んでいる模様。
 なお、検査件数については223,380件と昨年比3ポイント減で、検査比率は、輸入届出中の10.2%と0.9ポイント減。
1サンプルでの検査項目・内容が重複するため、検査件数の数え方が複雑な点や、我々輸入者に指示される「自主検査」の件数が不明確な点があり、把握しにくい面がありますが、違反数は1,053件とすれば、昨年マイナス200件であり、違反率は、届出件数中の0.051%、検査件数中の0.47%と(※昨年実績それぞれ0.06%、0.54%)と大きく減少しています。これこそ、管理者の皆様方の努力の結果であると感謝いたします。

 
 
   2 違反の傾向について  
     違反ののべ件数(重複を含む1,122件)を違反事由別に見ますと、「有毒・有害物質・病原微生物検出」が12ポイント増と唯一増加している他はすべて減少の傾向です。
 カビ毒のアフラトキシンについて、検査方法及び基準の変更があった事がこの増加の理由ではないかと推測できますが、その他には、大きな変化も見られず、輸出国の傾向、商品群別の傾向等にも例年と大きく異なる傾向は見られませんでした。


 
    輸入相談指導の結果についての「違反事例」の特徴について  
     今回の監視結果のうち、昨年とちがう点が明確で、参考になりそうな集計結果がありましたので以下に記します。検疫所の輸入相談指導室に事前相談された27,825件のうち、「輸入できない」とされた372件の事例です。新規予定の商品でしょうし、その年の傾向もあるでしょうが、今後注意が必要な商品群の傾向が良く見えるように思われますのでご注目ください。

 
     [相談商品の輸出予定国及びその違反件数]  
   
 平成24年度結果    平成23年度結果
 国名  件数  該当商品上位2種  国名  件数  該当商品上位2種
 米国  81 健康食品、清涼飲料水  米国  73 健康食品、菓子類
 中国  52 菓子類シロップ フランス  37 粉ミルク、菓子類
 韓国  32 菓子類、健康食品 オーストラリア  36 リキュール類、清涼飲料水 
 イタリア  31 菓子類、冷凍食品  ドイツ  36 粉ミルク、ビール 
 ドイツ  30 冷凍食品菓子類 中国  26 即席めん、調味料
 フランス  22 菓子類、健康食品  韓国  26 清涼飲料水、菓子類 
 フィリピン  16 調味料瓶詰め  イタリア  16 菓子類、その他食品
 南アフリカ  15 健康食品 フィリピン  13 菓子類、魚介加工品 
 台湾  14 その他食品、茶代用品 タイ   12 清涼飲料水、調味料
 スペイン  13 ケーキ類、果実加工品  マレーシア   12 冷凍食品、ソース類 
 
 
   上記372件の違反事例を違反の理由で分類すると、圧倒的に「添加物による違反」を原因とするものでした。

 
     [違反原因ベスト8の違反多発国及び商品群]  
   
 違反添加物名  輸出国と違反商品群及びその件数 (品名の後に数量記入なしは1件)       
ソルビン酸カリウム
ソルビン酸
米国
清涼飲料水16
調味料
冷凍食品
中国
菓子9
調味料
野菜調製品
フィリピン
調味料10
イタリア
冷凍食品4
清涼飲料水
オリーブ
 タイ
調味料4
フランス
リキュール3
ヒマワリレシチン イタリア
菓子類6
その他の食品3
フランス
菓子類5
米国
農産加工品2
その他の食品
韓国
健康食品
ドイツ
冷凍食品
ベルギー
菓子類
安息香酸
その他の安息香酸塩 
中国
菓子類6
健康食品
フィリピン
調味料5
トルコ
調味料2
漬物2
チェコ
調味料3 
韓国
調味料3
ベトナム
漬物
調味料
アゾルビン フランス
健康食品2
果実調製品
ベルギー
菓子類2
スペイン
ケーキ類
トルコ
菓子類
ベトナム
菓子類
 
ポリソルベート  米国
健康食品3
菓子類 
韓国
菓子類5
調味料2
ベトナム
ココナツミルク
     
TBHQ  米国
その他の食品4
中国
菓子類
種実類
オーストラリア
ケーキ類
穀類加工品
     
ヨウ素化塩 ドイツ
冷凍食品6
中国
菓子類4
ベラルーシ
菓子類2
インド
菓子類
イタリア産穀類調製品とフランス産粉乳にヨウ化カリの添加あり 
製造基準不適合  米国
食肉製品2 
イタリア
食肉製品
韓国
清涼飲料水
マレーシア
レトルト品4
   
 
 
   上記のごとく、同じ添加物であっても“国によって使われ方が違う”ため、傾向が良く見えます。注意すべき点がはっきりしていますので、ご自身の取扱品目が該当する場合には、再度点検することをお勧めします。
 なお、なぜ、違反が多発するのかについて、背景等を加えて判り易く列記してみましたので以下に記します。
参考にしていただければ幸いです。

 
     [違反となり易い理由及び注意点]
違反添加物名  違反となり易い理由及び注意点
ソルビン酸カリウム
ソルビン酸 
日本ではチーズや魚肉練製品等に使用できるが、清涼飲料水や菓子には使用できない。 さらに、原料としてのジャムやシロップからの移行での違反(サンドビスケット他)が多い。
ヒマワリレシチン 大豆、アブラナ、鶏卵を基原物質とするレシチン以外のレシチンは認められていない。酵素処理レシチンや、分別レシチンも同様。 (現在、許可について審議中)
安息香酸ナトリウム
安息香酸
よく似た保存料であるのに、ソルビン酸類と使用基準が大きく異なり、清涼飲料水には使用できるが、醤油及びシロップ以外の調味料、漬物、ジャムには使用できない。 
アゾルビン 色調が安定な色素であり、欧米で認められているが、日本では認めていない。キノリンイエローやブリリアントグリーンも同様に注意が必要。
ポリソルベート  ポリソルベート80としての使用総量が定められている。ポリソルベート20、60、65、80は許可されているが、ポリソルベート40は許可されていない。
TBHQ  多くの国で油脂の酸化防止剤として認められ、使用量も多いので、油脂からの移行や油脂の容器の共通利用による微量移行が原因である事例が多い。 
ヨウ素化塩  中国、ドイツ、米国、台湾、ベトナム、オーストラリア等は食塩にヨウ素の添加が推奨されているため、無添加の塩の使用を指定しなかった為等による混入が原因である事例が多い。 
製造基準不適合  食品衛生法において、食肉製品や清涼飲料水等は規格基準中に製造基準が定められており、これに合致した製品でなければ輸入できない。特に殺菌温度と時間の基準の違反事例が多い。 
 
       
  ※日本で使用できる添加物のリスト他を詳細調査するにはこちら  
    http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/

 
  ※食品別の規格基準、製造基準他はこちら  
    http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/jigyousya/shokuhin_kikaku/   
       
       



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