no.8 2008.9.9

中国食品の安全状況について

平成20年8月20日、中華人民共和国国務院より「中国の食品品質の安全状況」が公表されました。ジエチレングリコール事件やメラミン事件、冷凍ギョウザ事案の印象が残るなかで、オリンピック関連の選手、報道、観光客への安全保証を意識してか、監督管理を強化した旨の報告が目に付きますが、食品輸入に関連する事項についての内容を以下に要約して紹介します。

1.生産の概況
・全国には食品生産加工企業が44万8000社ある。
・一定規模(国有あるいは年間500万元以上)の企業は2万6000社であり、その市場占有率は72%。
※一定規模以下で10名以上の企業は6万9000社、市場占有率18.7%、10人以下の零細企業は35万3000社あり、市場占有率は9.3%
・2006年の食品工業規模は、およそ3兆元(約48兆円)、一定規模以上の企業による生産総額は2兆1600億元(約35兆円)、前年比23.5%の増加。(タバコを除く)


2.品質の高まり
・全国規模の食品抜取り検査合格率は 06年77.9%、07年85.1%と良化している。
・中国の「消費量トップ10」は食用油脂類、酒類、水産製品、食糧加工品?、飲料、肉製品、乳製品、調味料、デンプン及び加工品、砂糖。水産製品の抜取り検査合格率は85%だが、他は90%以上である。
・06〜07年に合計7,880社(11,000回)の抜取り検査を行い、240社の製品に中国ブランドを、548社に国家検査免除を与えるとともに、検査で問題が見つかった355社の製品を公表した。
・07年上半期での米国での中国製輸入品の検査合格率は99.1%、EUでは99.8%、日本では99.42%であった。


3.監督管理システム
 
・中国は2001年より「食品品質安全市場参入制度」を導入した。これは以下の3部構成となっている。
@ 生産許可制度(必要な条件を満たし生産許可証を獲得した企業のみが食品を生産販売できる)
A 強制検査制度(製品は検査され、合格しなければ販売できない)
B 市場参入許可標識制度(検査に合格した製品にはQS標識を貼る。
※ 2007年上期累計10万7000の許可証を発行済
※ QS標識のない食品の市場参入(販売)を禁止?した。


4.輸出食品の監督管理
・予防を主とし、根源から監督管理し、全プロセスをコントロールする原則から「1つのモデル、10項目の制度」のシステムを確立した。
〔モデル〕:会社+基地+基準化を基本とする生産管理を推進
〔制 度〕@供給源の監督管理の3項目 
        ・栽培養殖基地の検査検疫報告の公簿登録
        ・疫病監視・観測制度
        ・農薬・獣医薬の監視管理制度
      A工場監督管理の3項目
         ・衛生登録制度
         ・企業分類管理制度
         ・高リスク食品大手企業への検査検疫官の駐在制度
      B製品監督管理の3項目
         ・輸出食品法的検査検疫制度
         ・品質の追跡検査とリコール制度
         ・リスク警報と緊急対応制度
      C信用建設の1項目
         ・輸出食品企業のブラックリスト、ホワイトリスト化と掲示の制度


5.食品品質安全基準システムの整理統合及び改定
・重複、格差、欠落のあった多数の基準等を見直し、農産物の産地環境、灌漑水質、農業生産財の合理的使用、動植物検疫規定、適正農業規範、食品の中での農薬・獣医薬・汚染物・有害微生物の制限基準、食品添加剤及び使用基準、食品包装材料衛生基準、特殊ダイエット食品基準、食品ラベル標識基準、食品安全の生産過程・抑制基準、食品検査・測定方法基準など、強制的な国家基準の634に整理統合した。

6.食品安全検査・測定システムの枠組み形成
・ 国クラスの検査測定機構を先頭に省クラスと部門別の検査測定機構を主体とし、市クラス、県クラスの検査測定機構を補助とする食品安全検査測定システムを形成。
・実験室に対し国際慣例に従った認可管理を実行。
@3,913の食品類検査測定実験室が実験室計量認定を保有、そのうち、食品類の国家製品品質検査センターは48箇所、重点食品類実験室は35箇所。
A輸出入食品の監督には、35の国クラス重点実験室をトップに、全国で163の輸出入食品検査検疫実験室があり、1,189名の技術者が従事。
B日本は、中国国家品質検査総局に直属する35の検査検疫局の検査結果を 認めている。

大筋としては以上のごとくですが、2.の通り、中国の輸出食品の各国の合格率は99%を越えており、これは、4.の「10項目の制度」の効果及び輸入者の皆さんが選定した工場が適性であったことによるものと考えますが、「全国規模の国内抜取り品の合格率」が85%のレベルにとどまっている状況ですので、有名銘柄以外の市場購入品の輸入には、まだまだ注意が必要ということでしょうか。

また、輸入に関係がないので要約しませんでしたが、このレポートには、1万6000の市場、204万の飲食店を検査し、30万箇所もの無許可営業や粗悪品製造者を処分したとの報告があるにもかかわらず、抜取り検査の“件数と結果”については、7,880社(11,000回)とあるのみですので、他のデータ(3のA強制検査制度による結果、4のB輸出食品法的検査結果)等がどんな状況なのか知りたいところです。

いずれにしても食品輸入者としては、QS標識のない製品を作っている企業やブラックリストに掲載されている企業とお付き合いをしないこと、定期的にリスト検索をすること、取引企業が「生産許可」をもっているかを再確認すること、品質確認検査を依頼している検査機関が、国クラスのレベルであることを確認することが次回の工場訪問のテーマとして必要と考えます。

ブラックリスト企業のリストは以下のアドレスで
http://www.aqsiq.gov.cn/ztlm/jckspwgqymd/200706/P020080807589974840822.doc

中国ブランド付与の企業・製品のリストは以下のアドレスです
http://www.aqsiq.gov.cn/tycx/mpcpcx/200710/t20071018_46745.htm




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